ページ

2016年10月25日火曜日

「第68回 正倉院展」へ*

ほぼ毎年、会期2日目の日曜日のオータムレイトの1時間前に入場している正倉院展。今年もじっくりゆっくり鑑賞してきました。
今年のポスターやチラシを飾るのは「漆胡瓶しっこへい」。
少し地味だなぁと思いながら、正倉院展が始まる直前まで私事で忙しくしていたこともあって、その他の出陳品が何なのかも予習せずに出かけた展覧会。
かえってそれがよかったのか、今年も大好きな布ものがたくさん出ていたせいか、見終わったあとは「やっぱり正倉院宝物はいいなぁ」と、今年も感動を新たにしたのです。

::
では恒例の、自分流鑑賞記を図録の写真とともに綴ってみましょう。
「大幡残欠だいばんざんけつ
今回はこの大きな幡が一番印象に残っています。
大仏殿で執り行われた聖武天皇の一周忌斎会にて法会の場を飾ったものの一つだそうです。横にして展示されていましたが、10メートルを越すほどのサイズのもの。保管や保存上の問題もあるでしょうが、これがもし縦に掲げられていたらと想像するだけで身震いしそうです。  
幡本体の横についている組紐状のものも美しく、彩色も綺麗に残っていて見ごたえがありました。当初はこれに幡脚と脚端飾りが付いていて、総長は東大寺大仏に匹敵する13~15メートルに及んだそうです。
「浅緑地鹿唐花文錦大幡脚端飾あさみどりじしかからはなもんにしきのだいばんのきゃくたんかざり」大幡の脚の先に付けられた緯錦ぬきにしき製の脚端飾り。中央に配された鹿が何とも胸キュンでした。
「大幡脚だいばんのあし
大幡にはこのような脚が12枚、少しずつずらして重ねられていたそうで、他にも色の違う何種類か展示されていました。
::
その他に、かなり彩色が綺麗に残っているものとして
「赤紫臈纈絁几褥あかむらさきろうけちあしぎぬのきじょく
献物用の台の上敷きだそうで、水鳥・波・魚の型に蠟を塗り、スタンプ状に捺して防染した上に重ね染めしたもの。
魚や水鳥がはっきりとわかります。
::
こちらはとてもユニーク。
「布作面ふさくめん
麻布に人の似顔絵が描かれて、顔につけて紐でくくって着用したもの。両目の下瞼に沿って細く切ってあり覗き窓としたようです。また笛などを吹きやすいように口のそばには縦に切れ目があります。
::
「金銀絵花葉文黄絁きんぎんえかようもんのきあしぎぬ
この巾着袋の残片もとてもよかったのです。
::
こちらの屏風は国産だそうです!
「鳥木石夾纈屏風とりきいしきょうけちのびょうぶ
樹下に見返る尾長鳥を左右対称になるよう表した6扇からなる屏風のうちの2扇。樹下に鳥獣を表す構図はペルシアに起源が求められるということですが、国産の絹(絁あしぎぬ)が用いられることから、中国の花鳥画の伝統を踏まえ、わが国で製作されたと考えられています。
::
大好きな布ものの他に、そして、これこれ!
美術工芸品の繊細なこと、そしてこの美的センスも!
「撥鏤飛鳥形ばちるのひちょうがた」は3cmくらいの、象牙に色付けした鳥形飾り。染色した象牙の表面を彫り、白い文様を現す撥鏤技法で作られています。
::
「牙櫛げのくし
これはまたすごい!長さ10,2cmに刻まれた歯は120本以上。1mm以下の間隔には寸分の狂いもないという超絶技法の象牙の櫛。素材に日本で産出しない象牙が使われていて中国からの輸入品と考えられています。
::
「銀平脱龍船墨斗ぎんへいだつりゅうせんのぼくと
船形の墨壺で、龍頭形の装飾。墨壺は加工材に直線を引くための大工道具で、この口から墨のついた糸が引っ張り出されたようです。
::
「和同開珎わどうかいちん」は初めて見たかも?
::
その他にも、ぐっと惹きこまれるものがたくさんあるのですが、自分の好みに絞って紹介いたしました。毎回思うことですが、天平時代の工人・職人たちの技術や芸術的センスに脱帽です。
会場を出てからオータムレイトチケットを買って、コレクトしている記念品をget。正倉院展の切手も購入といういつものパターン。
目も心も大満足の正倉院展でした。


::
「第68回 正倉院展」
会期:10/22(土)~11/7(月)
開館時間:午前9時~午後6時 (金・土・日・祝日は午後8時まで)
※入館は閉館の30分前まで
休館日:会期中無休
詳細はこちら→
読売新聞の特設サイトはこちら→