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2013年6月14日金曜日

「ボストン美術館〜日本美術の至宝」展へ*

5月中旬に一度鑑賞し、もう一度どうしても観ておきたいものがあって
会期終了間際に二度目の鑑賞に行ってきました。(会期は6/16まで)

もう一度、目に焼き付けておきたかったのは・・・
奈良の寺社とも関係のある仏教絵画と
迫力ある筆致で描かれた「平治物語絵巻」
そして、やっぱり曾我蕭白の「雲龍図」も。

図録から撮ったわかりにくい写真ですが++
「法華堂根本曼荼羅図」奈良時代
かつて東大寺法華堂に伝わっていたと云われているこの曼荼羅図。
損傷も激しく岩絵具が剥落している部分もあるのですが、朱色は鮮やかに残って、奈良時代(8世紀)に描かれたものとは思えないくらい。
そして、奈良時代の仏画を今ここで観ていると思うだけで、奇跡のような出来事に思えるのでした。(奈良の寺社にある寺宝と違って、もうこの仏画を生きている間に観ることはないかもしれないと思うだけで感じ入るものが・・・←少々、大袈裟ですが。)

「四天王像」 鎌倉時代

廃仏毀釈で廃寺となった、天理市の内山永久寺真言堂の障壁画であった可能性が。右端の多聞天像などは金箔や朱色もよく残っていて、廃寺となって今は見る影も無い内山永久寺が、かつては多くの伽藍を備えた大寺院であったと、皮肉にも、海を渡って残された「四天王像」によって思い描くことができたのです。

その他に、興福寺や春日大社由来のものなど、奈良と繋がりのあるものも多く出陳されていて、見応え充分。しかも、その多くは日本に残っていれば国宝や重文指定を受けてしかるべき素晴らしきものばかり。

それにしても・・・どれもこれもが保存状態が良く美しい!
今まで奈良国立博物館の展示などを通して、平安〜鎌倉時代の仏画に触れる機会もありましたが、これほど保存状態のいい美しい仏画を観たのは初めてです。

 
このような鮮やかな朱色は、修復作業によって新たに甦ったものでしょうか?(図録を読むと、ボストン美術館には、アメリカで最も古い東洋絵画修復室があり、今回の展覧会の準備のために5年かかりで、出品作の多くに本格的な修復処置が行なわれたとありました。)

「平治物語絵巻 三条殿夜討巻」も、もう一度観ておきたかった!
生き生きとした筆遣い、繊細で大胆!炎の勢いある描き方もすごいけれど、なだれ込む人々の描写もまた上手い!

ところで、会場の展示空間の流れも、奈良時代から平安〜鎌倉時代の仏画・仏像・絵巻と続いて、次の展示室は、中世水墨画。その後は安土桃山時代から江戸時代に至る狩野派や等伯、宗達、光琳、若冲といった錚々たるメンバーの錚々たる作品が続いて、もう眼が喜ぶことといったら!(眼福とはこのことなり♫を実感しました。)
そして最後に曾我蕭白コレクションの全容が明かされて、観ているだけでもワクワク楽しい展覧会でした。
(蕭白の「雲龍図」の勢いのあること!ほとばしるエネルギーを感じて元気を貰いました。)

日本美術の底流を追っていくような展示の仕方から感じたことは
長い歴史の蓄積があって大変層の厚い日本の美術世界の素晴らしさと
このような芸術世界を持つ日本の文化をあらためて誇りに思えたこと。

翻って世界の人が、ボストン美術館の日本美術コレクションを観れば
必ず日本の国の文化に敬意を持ってくれるのではと思いました。
そして、それこそが世界と繋がる、世界中と理解し合える鍵なのではと思いました。

最初、この展覧会を観るまでは、私も「なんでこんなにお宝が海外に流失するの」という気持ちを持っていました。
「流失」という言葉。確かに日本国内からは消えてなくなっています。
でも、フェノロサやビゲローがただ単に日本美術の至宝を買い漁ったのではなく、何年もかけて日本美術を勉強して、その結果、敬意を持ってコレクションしていったことや、アメリカに帰国後はボストン美術館に寄贈して、その後は美術館として系統だったコレクションを積み上げていったことなどを、図録を読んで知り、展覧会でも実感したのです。(いや、まぁコレクターとして買い漁ったところもナキニシモアラズだった面もあるでしょうが)

最後に、図録に書かれていた岡倉天心の言葉 
「東と西は互いをよく知るべきである。(ボストン美術館のような)素晴らしいコレクションは、この目的達成を助ける」に強く共感しました。

会期終了間際のブログアップになりましたが、鑑賞を強くお奨めしたい展覧会です。ご都合よろしければ是非どうぞ。

「ボストン美術館〜日本美術の至宝」展

会場:大阪市立美術館
会期:6/16(日)まで
開館時間:9:30〜17:00(入館は16:30まで)

<<おまけの画像>>



黒田藩旧蔵屋敷長屋門とあべのハルカス。
この日はオープン前の内覧会で 溢れかえるような人人人でした。