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2012年10月8日月曜日

「五劫思惟像、かたちのひみつをさぐる」

祈りの廻廊「現地特別講話」で
「五劫思惟像、かたちのひみつをさぐる」と題した講話が
10/5に五劫院で行なわれました。
お話して下さったのは奈良国立博物館の岩田茂樹先生です。

奈良倶楽部の2軒お隣の五劫院さんご本尊・五劫思惟阿弥陀如来坐像は
写真のように螺髪がもりもりと盛り上がって「アフロヘアの仏さま」と
いう愛称でも親しまれています。

ご存知のように、東大寺にもまた同じ五劫思惟阿弥陀如来さまがいらっしゃり、10/5同日に特別公開されています。
阿弥陀如来像としては異形のこの二像は、鎌倉時代に重源上人が宋より将来したと伝えられているのですが、現在の見解では「おそらく日本で宋の彫刻などにならって、鎌倉時代につくられたものと推測される。」が通説になっているのだそう(東大寺サイトにもそのように掲載されています。)で、今回はこの点についてお話をして下さいました。

メモしてきたことを箇条書きに記してみます。

五劫院の五劫思惟阿弥陀如来坐像の
 <形状の特徴>
①衣は両肩を被って着ている。通肩。
衣のひだが具象的でなく象徴的。重く、鈍い衣文表現。
②両手先は衣の中(印相不明)※東大寺は両手先は胸前で合掌
③足が短い。跌坐する(外足不明)。足が胴と一体化している。
④目尻が長く見えるがこれは漆の亀裂である。
⑤耳たぶに穴が開いている。
⑥螺髪は一個一個別々に貼付けている。
螺髪の文様は、同心円のものが古くオリジナル。
新しいものは渦巻き文様。(後補のものが多い)
⑦白毫は水晶ではなく玉材(石)である。

<構造の特徴>
⑧材はヒノキで一材から大半を丸彫する。
⑨頭・体部ともに内ぐりを施す。
内部は、表面の段差になぞるように綺麗にくりぬかれている。
※東大寺は体部だけ内ぐり。
⑩像内各部(両肩や背中)に窓が開いていて外から蓋をしている。
⑪頭髪の地色は朱彩。(通常の仏様は青色である。)
 ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
「内ぐりが綺麗=金銅仏の特徴」
「像内各所に窓が開いている=金銅仏にある鉄芯」
「頭部が赤い=鉄の色をイメージ」
 ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 
これらから考察すると
重源の時代の宋では鉄仏が盛んに作られていて
重源は鉄の阿弥陀様を持って帰り
それをモデルにして忠実に写させて作らせたのではないか。
・・・ という説を立てられて
宗教的に意味が無い事もちゃんと写しているのが
東大寺と五劫院の五劫思惟阿弥陀如来坐像で
この二像が日本に現存する他の五劫思惟阿弥陀如来坐像のモデルになっている・・と結ばれました。

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2010年10/5に 五劫院の五劫思惟阿弥陀如来坐像が
東京国立博物館での東大寺展に出陳されるために搬出作業を
されている様子を見学させていただいたことがありました。

ちょうどお御簾から運び出される時に像底が見え
内部がぽっかりと空洞だったことを覚えています。
「だから案外軽いのですよ」と博物館の先生が仰ってましたが
背中から見た五劫思惟阿弥陀如来坐像の様子はとても重く感じ
大変な重力を仏様が発しているように思えました。

その時のブログ記事中
許可を得て撮影し、ブログ掲載も許可を得た
五劫思惟阿弥陀如来坐像のお姿があります。

今回の講話を聞くまでは、重源上人が宋より将来された仏像だという寺伝の通りに思っていましたが、学術的にはこのような見解になっているとのことで、非常に興味深いお話を聞くことができました。
どうもありがとうございました。

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祈りの廻廊「現地特別講話」のサイトはこちら
講話は事前申し込み制で、まだ応募受付け中のものもありますので
よろしければサイトを参照にして下さい!