ページ

2011年6月28日火曜日

「白磁の人」

大阪の東洋陶磁美術館で開催中の特別展
浅川巧生誕百二十年記念 浅川伯教・巧兄弟の心と眼-朝鮮時代の美-」
を見に行ってきました。

浅川伯教・巧兄弟についての展覧会では
昨年の高麗美術館『浅川伯教・巧が愛した朝鮮美術』展でも
浅川兄弟が好んだ陶磁や木工家具、自筆の日記や絵画資料、
柳宗悦、富本憲吉などゆかりの品々を写真、書籍とともに展示紹介されていましたが(その時のブログ記事はこちらです)
東洋陶磁美術館では 李朝白磁や高麗青磁など浅川兄弟や柳宗悦が選び抜いた旧朝鮮民族美術館のコレクションが中心となって展開されています。もちろん陶磁器だけでなく伯教作の絵画資料や陶芸作品もあって(この陶芸作品がまたすごいレベルのもので)これも見逃せませんが、李朝白磁ファンなら垂涎の白磁がどーんと一堂に展示されていて、本当にもう!ほーっと溜息ばかりの展覧会でした。(頭の中ではあれ欲しいこれも欲しい、この時代に生まれてみたかったとか・・・)

展覧会に行く前に、浅川巧の生涯を描いた「白磁の人」を読んで行くといいよ・・と友人から奨められていたのですが、確かに。

この面取壷が 伯教が柳宗悦に会いに行った時の手土産だ!とか
伯教が京城の道具屋で見つけた白い壷がこれなんだ!とか
どの器にも兄弟が朝鮮で暮らしていた時のドラマがあり、また、これらの器に出会った時の彼らの感動や息づかいまでもが感じられて、鑑賞していてもすごく感情移入をして見てしまいます。

「白磁の人」の中で伯教が巧に「美とはまず見ることであり、感じることだ。知的な要素や理論、理由が先に立ったならば、美は見ることも感じることもできない」と話すくだりがあるのですが、本当にその通りで「今日は鑑賞記をブログに書くのはやめよう。素直にいいものを見させてもらおう」と思いながら朝鮮陶磁の魅力に触れることを楽しみました。(展覧会鑑賞記を書こうと思うと、つい余計な目で見てしまって心底楽しめないですよね、実は。)
そうして、一度見た後にもう一度、会場を二巡して白磁をたっぷり堪能しました。
余談ですが、東洋陶磁美術館の展示空間は観る者を疲れさせないような設計になっていると感心しました。(ガラス面の前に両肘をつける部分があって、リラックスして鑑賞できます。)

ところで、この「白磁の人」の後半部分の中に
池順鐸チスンタクという少年が伯教の通訳として登場します。
彼は伯教のそばで朝鮮陶磁に触れたことから自分の手で失われた青磁の青を復活させたいと思い、十数年の歳月をかけて伝統の青磁を蘇らせるのです。この池順鐸氏こそが、戦後の現代韓国陶芸界の巨匠となった方なのですが、たまたまこの本を読んでいた5月下旬にご宿泊いただいた韓国在住のお客さまとお話していましたら、池順鐸氏の作品を何点か所有されているということで、後日その写真をメールで送って下さいました。思わぬところからの出会い、いつかまた韓国を訪ねる機会があれば池順鐸氏の作品も見てみたいと思いました。

もう一度「白磁の人」の内容に戻りますが、この本の中で浅川巧は、『卑屈になることにも媚びることにも無縁で、相手の気持ちを自分の方に向かせてしまう。そして初対面だというのに警戒心も抱かせず、こちら側に決して心の負担を感じさせない』人物だと表現されています。『まるで白磁の大壺のように、大らかで自然である』と。

浅川巧の魅力的な人となりを充分に描いたこの小説、展覧会に行かれる前に読まれると、また違った一面を発見できるかもしれませんね。

東洋陶磁美術館 特別展
浅川巧生誕百二十年記念 浅川伯教・巧兄弟の心と眼-朝鮮時代の美-」

会期:4/9〜7/24
開館時間:9:30〜17:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(7月18日は開館)、7月19日(火)
※この展覧会は巡回します。
・8/9〜10/2 千葉市美術館
・11/19〜12/25 山梨県立美術館
・1/14〜3/20 栃木県立美術館

::

大阪中之島付近は久しぶりでした。
中之島図書館↑と中央公会堂↓
水都大阪の景色に涼を求めてしまいます。

::

さて、今回はもう一つお楽しみがあったのです。
堂島MUSICAさんのウニスパ♪と紅茶の買い出し。
::

鑑賞記をブログに書かないでおこうと思いながらも
浅川巧について書かれた小説「白磁の人」を紹介しがてら
つれづれと中途半端な感想を書いてしまいました。
「白磁の人」は小説仕立てで書かれているのでとても読みやすく
展覧会に行く予定の方は一読をお奨めします。(6/17鑑賞)