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2010年12月29日水曜日

2010年の良き思い出*「祈りの回廊」巡り


今年、奈良県では、一年を通して、平城遷都1300年を記念した
『祈りの回廊〜奈良大和路 秘宝・秘仏特別開帳』が開催され
中々拝観できないような秘宝秘仏が特別に公開されていました。
50ヶ所を超える社寺での秘宝・秘仏特別公開。私自身も
できるだけ時間のある時に「祈りの回廊」巡りを楽しみ
今年一年の個人的な思い出ランキングでも上位に入る程
2010年という年の記憶に残る出来事となっています。

個人的な記録メモですが、下段に私が巡ったところと
簡単な思い出を日付順に記してみました。(★印はブログ内記事です)

2月
「中宮寺 表御殿室内」特別公開
門跡寺院の奥の奥を公開していただけるなんて!と
「祈りの回廊」巡りのこれからの一年に期待も高まるスタートでした。
「元興寺の国宝・禅室 影向間」特別公開
秋の屋根裏探検をこの時から期待して待っていた記憶があります。
「法隆寺 伝法堂の内陣諸仏」特別公開
冬のオフシーズン中でも特別公開をすれば
これだけ多くの観光客が来られるのだとしみじみと実感。

4月
「五劫院 五劫思惟阿弥陀仏坐像」特別開帳
同じ町内の五劫院に拝観の人がこれほど多く来られたのを
間近に見て「祈りの回廊」の実力を感覚的に感じた。
「頭塔」特別公開
事前予約無しで拝観できるっていいよー。

5月
「霊山寺 三重塔初層内陣」特別開扉
薔薇の花が咲き誇る頃に合わせての特別開扉なので
両方合わせて楽しめるのがよかったです。
「春日大社 夫婦大国社 御前立神像」特別開扉
春日大社は「祈りの回廊」に参加するだけでなく
遷都1300年記念に独自の取り組みを色々されていて
お客さま方にもとても好評でした。
「璉珹寺 阿弥陀如来立像」特別公開
こちらも美しい花の時期に合わせて拝観できたのが印象に残ってます。
「石上神宮 国宝七支刀」特別拝観
1300年どころではない1650年も前の七支刀を拝観でき大感動。
「祈りの回廊」の充実ぶりはすごい!とまた感動。

6月
「法華寺 名勝庭園」特別公開
名勝庭園の杜若の盛りも過ぎていてちょっと残念だったけれど
お気に入りの庭園「華楽園」の花々に心癒されてました。
「當麻寺 東塔・西塔初層」特別開扉
両塔特別開扉をきっかけに當麻寺全体をゆっくり拝観できたのが何より。
「松尾寺 役行者像」特別開帳
私が巡った中でのベスト1が松尾寺の役行者像!
思い出すだけで幸せな気持ちになるのです。
「矢田寺と東明寺」特別開帳
矢田寺では、ボランティアガイドの方のさり気なく気配りされた
ガイドぶりに好感が持てました。ありがとうございました。

8月
「薬師寺 東塔初層」特別公開
「西大寺 愛染堂客殿内部」特別公開(ブログ内記事は上と同じ)
猛暑の8月でしたが、空いてる時間に出来るだけ巡ろうと
この日はポイントを稼ぐような気持ちで回ってしまった。反省。
でも20年ぶりに訪れた西大寺がすごくいいお寺だとわかって嬉しかった。

9月
「金峯山寺 金剛蔵王権現像」特別公開
100日間の公開期間中に必ずもう一度行こうと思いながら、私自身は行けなかったけれど、奈良倶楽部のお客さまにはお奨めNO.1のところでした。皆さん感動して帰ってこられるので、こちらもその感動のお裾分けをいただいた特別な100日間でした。あの大きな蔵王権現像の前では自分が幼子になったような素直な気持ちになれて、こちらも役行者さんつながりなので、今年は役行者さんがぐんと身近な人になりました。

10月
「元興寺 国宝禅室の屋根裏探検」
国宝の建物の屋根裏に上がって、飛鳥時代の建材を直に触ってみる。
これって凄いことでしょ!ワクワク楽しくって凄いこと。
こんな素敵な企画を考えてくれるなんて「祈りの回廊」サイコー♡
「不空院 不空羂索観音坐像」特別開帳
元興寺と同じ日に拝観したので印象が薄くなってしまった。
こういう拝観の仕方はよくないなと、ちょっと反省。
「宝山寺 獅子閣」特別公開
宝山寺でも、職員の方が丁寧に説明して下さって
お寺の方が文化財に対して愛情と誇りを持ってらっしゃるのがよく伝わって
そういう意味でも大変有意義でした。
「海龍王寺 十一面観音像」特別公開
こちらの十一面観音像は本当に美しくて、優美な姿に見惚れてしまうのです。
先代ご住職が模刻した仏像88体も公開されていて、その素朴な姿には何か感じるものがあります。この時は金網越しだったのですが、今はアクリル板越しになったそうです。

11月
「圓成寺 寺宝」特別公開
紅葉の時期と重なって、秘宝秘仏と紅葉狩りと二つ楽しめるのがいいですね。
「円照寺 庭園」特別公開
事前申込みの競争倍率はすごかったらしいです。
こういう機会に恵まれましたことに感謝です。
「浄瑠璃寺 吉祥天女像」特別公開
上の円成寺も浄瑠璃寺も紅葉が美しいお寺なので
秋の一日をのんびり遠足気分で楽しめるのです。
でも、観光シーズン真っ直中の私はそれどころではなく
忙しい時間をやりくりしてのピンポイント拝観だったのでした。
それでも紅葉の美しさに心が洗われお参りできてよかったとつくづく思ったのでした。
「大安寺 十一面観音立像」特別公開
12月に入ったらもう少し回れるかなと思っていたのですが、
11/30の大安寺が最後の拝観になってしまいました。
隆盛を誇り栄華を極めた南都七大寺の一つだった時代の大安寺を想像しながら
境内に佇むも、本堂の中は、ストーブに火が入り、一面に並べられた座布団の様子がどこか檀家寺のような感じで、これがまた今の奈良のイメージと重なるように思えて面白いなと。

・・・と、こんな風に楽しみながら拝観しておりました。

私がようやく「祈りの回廊」という言葉の意味を噛み締められたのは、6月紫陽花の季節に訪れた矢田寺、松尾寺での拝観でした。
過去記事と重なりますが、その日のブログに書いた文章を少し要約してもう一度記します。

矢田寺では、ゆっくり寛ぎながら、とても気持ちのいいお参りができました。
それというのも、ボランティアの方の大変詳しい説明がよかったことや、お寺の方達が親しみのある接客態度でご案内して下さるなど、いろんなことが相乗的に起こったからで
モノ(秘仏)だけではなく、人というか、おもてなしの心も、寺院の中であっても大事なことだとしみじみと思いました。

また、松尾寺の役行者像にすごく感動したのですが、その背景として考えてみたことは・・・。
像を造った当時は勿論、その像が守り伝え続けてこられたのは
人々の祈りや願いや尊敬や諸々の目に見えない気持ちが
そこに昇華していて、結果として形ある像があるのではないかと
いつも思うのです。芸術と言われる作品にはそういう魂がこもっていて
その昇華したエッセンスが見る人の心を打つのではないでしょうか。
数々の仏像しかり。唐招提寺の鑑真和上像にも東大寺の重源上人像にも
造られた背景、造ろうとした人々の気持ち、
それを大事に護り伝えて来た人々の気持ちが
そこに刻印として残っているように感じます。
この役行者像にも同じようなものを感じましたが、それ以上に
この行者さんの慈悲深いまなざしを見ていると、不思議ですが
何でも包み込んでくれるような大らかな温かさも感じるのです。

矢田寺の地蔵菩薩立像も、自然と手を合わせて祈願してしまう、
素直になれる不思議さを持っているお地蔵さんだったし
役行者さんもしかり。
秘宝秘仏というのを「めったに見られないものが今だけ特別公開」的に
捉えていたのでしたが、そうじゃない。
この「祈りの回廊」の奥深さ、底力、本物の凄さというものを
今日つくづく理解できたのは一つの収穫だったかもしれません。
青字が過去記事からの文章です。↑)

また、観光面での集客ということにおいても
特別拝観の時期を、アジサイ寺として名高い矢田寺の
紫陽花の開花時期に合わせて6月に設定されたことや
近辺のエリアのお寺も同時期に合わせられたことによって
「エリア」という面と、各寺院(点)を「巡る」という動線がうまく機能して、今後の一つのモデルになるのではと思いました。

で、もう一つ。観光面での集客という点で考えた場合
今年の正倉院展の時期に開帳される所が重なり過ぎ
飽和状態のようにも思いました。
2月の法隆寺や中宮寺、6月の矢田寺地域、9〜12月の金峯山寺のように、オフシーズンな時期にも特別開帳していただけるよう
来年以降のこの事業の継続と、意志あるコーディネート力を望みます。

最後になりましたが、「祈りの回廊」事業で素晴らしいガイドぶりを発揮され、私を含め多くの方に感動を与えて下さったボランティアグループの「ナント・なら応援団」の方々へお礼申し上げます。どうもありがとうございました!

「ナント・なら応援団」についての詳しいことは
『日々ほぼ好日』さんのブログをご覧下さい。  

トップの画像は水面に映った當麻寺東塔の水煙。