ページ

2010年10月26日火曜日

海龍王寺「十一面観音」特別開帳*


金泥が施され、頭飾りや装身具や衣にも精緻で見事な錐金や透彫りの
優美な姿の十一面観音像に、もう一度お会いしたくて、特別開帳中の
海龍王寺を訪ねました。

この仏像は、光明皇后が自ら刻まれた十一面観音像をもとに
鎌倉時代に慶派の仏師により造立されたとあります。
長い間秘仏であったために、衣の装飾の彩色も錐金文様も大変美しい
状態で残っていて、うっとり見惚れてしまいます。

今期の特別開帳では、先代ご住職が四国八十八カ所の本尊を模刻した
仏像88体が初公開されます。
先代ご住職は元々宮大工で、荒廃していた寺の復興を祈って
釈迦如来像や千手観音像など88体を数年で彫られたそうです。
普段は護摩堂に安置されていて、公開されたことがなかったので
こういう機会も楽しみに伺いました。

お堂の右手奥に像高40~50cmほどの小さな仏さまが88体。
まっすぐな眼差しを向けて、お行儀良く並んでらっしゃいます。
宮大工だったとはいえ、専門家の仏師ではない人の手による仏さま。
何とも素朴であたたかなお顔。でも素朴だけでない、これを彫った
人の心の中の何か崇高な信仰心のようなものを感じました。
ずうっと眺めていたいような、ありがたい感じも。

ただ、88体の仏像が金網越しだったことが
仏像がほのぼのと心に響いただけに
どうしても網の間から覗き込むという印象が強くなって
ゆっくり対座できなかったので残念に思いました。

でも、後日ご住職様からお話を伺って
『昨今の世情、仏像の盗難が多いことに加え、一体でも失うと、
八十八ヶ所の意味合いまで失ってしまいますので
金網越しの拝観という 無粋なことになってしまいましたが
どうぞご理解下さい』ということでした。

トップの画像は海龍王寺の参道。
築地塀とともにいかにも奈良らしいお寺の風情を感じるところです。
2枚目の写真、右手が本堂。正面が奈良時代建立の西金堂。

海龍王寺
十一面観音像特別開帳は11/11まで。9:00~17:00(受付16:50)
光明皇后1250年御遠忌の今年は
光明皇后の自筆と伝わる自在王菩薩経も公開されています。
詳細はこちら→